研究者、メディアアーティスト、起業家である落合陽一さんの著書・半歩先を読む思考法。30歳代にして本も多数出版され、政府有識者会議の委員なども歴任されている落合さんが、どのような思考で様々なクリエイティブな提案をし行動に移しているのか参考になる一冊です。主にこれまで落合さんがTwitterでつぶやいた文言を落合さん自身が振り返りまとめた内容となっています。
「ちょっと先の時間」をの事を考えるのが心地良い。
前書きに書かれた一文ではありますが、タイトルと通ずる言葉です。ずっと先の未来は予測できないが、数年後の事は予測し行動に移すことができる。今と違う何かを考えている落合さんの思考が学べる内容です。
Twitterの活用
まずはじめの内容は落合さんとTwitterとの関係。落合さんがTwitterを始めたのは2009年。日々のアーカイブとしてTwitterで発信されています。これまでにTwitterをはじめて10年弱で6万tweet、文字数にして230万文字。これは落合さんが12万文字くらいで本を書かれるため、20冊程度の文字をtweetしてきた計算となります。本書ではこのtweetをもとに現在の考えをまとめられており、Twitterを活用する上で定期的な換気は必要であると言われています。落合さんはTwitterでは面と向かって言えないことを発信することは空気が悪くなると言われ、暴言を吐くようなアカウントはミュートにしたり削除したりと定期的な換気を行われています。現在イジメの形が変わってきており、従来、学校で行われていたイジメはSNSの普及により自宅でもその影響を受けることとなり、イジメられる側としては安心できる場所がないことが指摘されています。こういうSNSを活用する時こそ、正しい倫理観を持った言動が必要であると感じました。
【思い込む力】が研究には必要。
私は作業療法士としての臨床の傍ら、大学院で研究を行っている。少し不純な動機で通い始めた大学院であるが、研究を進めるうちに「この研究・この分野が自分のライフワークなんじゃないか」と感じ始めました。落合さんが以前上司に「研究には思い込む力が必要」、と助言をされています。「思い込む力」、他では言い表すことのできない言葉です。根拠のない自信を、根拠のある自身に変えていく。思い込みから俯瞰へ、文脈へ。そのために適切な問いを繰り返すことが必要であると言われています。また、落合さんが博士の指導教官に「ワンセンテンスでオリジナリティを表現できない博論はダメ」とアドバイスされています。私にとっても貴重な言葉であり、研究を進めるうえで基本となる考えがここにあるのだと感じました。
伝え方に「最大公約数」はいらない。
物事をあえて分かりやすく説明したり薄めて表現しない。これは落合さんが「考えるスイッチ」を入れる為にあえてしている方法です。分かりやすく説明しても、結局物事の本質は理解できない。満足度を上げるためには「考える」というマインドセットを作ってもらうことが必要です。分かりやすいものを理解しても他人との違いは生まれないしクリエイティブな発想にはつながらない。人に伝えるときには「最大公約数」として簡単に説明はせずに、「難しいものは難しい」という「考えるスイッチ」を入れる。人に伝えるとき、もしくは分かりにくい事象に出会ったときに、この「考えるスイッチ」を意識して物事の本質を見極めることが重要であると感じました。
疫病は新たな文化を連れてくる
ペストの大流行による検疫や公衆衛生、公立病院の発達。近年のコロナ禍における中国を代表する追跡・監視社会。居酒屋・ライブ等クラスターの発生しやすい場所に行けるのはデータが追跡可能な人に限られる社会。自由を奪われた2年間。プライバシーを意識し自由を遠ざけるのか、データを捧げ自由を求めるのか。疫病は新たな文化を連れてくる。コロナウイルスの一日も早い終息を願う一方、今後の新たな文化を選択すべき時が来るのかもしれない。
死ぬのは仕事が終わってから
仕事は死を忘れる道具。2020年、落合さんは「自然と調和するアートとテクノロジーのサイクルを作り上げ、人の多様性を拡張し、万物と共感覚の結びつきを持ち様な社会を作る」という目標を立てています。忙しい日々の中、様々な人に支えられ、この目標に向かって突き進んだと落合さんは言われています。その中で見出しにある心境に至っています。自分のライフワークとは何か。今、自分のしている行動はどのように社会に役立つのか。私も歩みを止めず日々考え、前に進む刺激となりました。
まとめ
本書を読んで、日本のために落合さんは無くてはならない存在であると感じた一方、落合さんの体調を心配しました。しかし、SNSの活用であったり、思考法という点では大変参考になる内容です。特にクリエイティブに仕事に取り組むためのヒントがここにあると思います。気になる方は本書を手に取ってみてください。
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